Staff interview #34 「スタディサプリ 合格特訓コース」チーム

生徒一人一人に担当コーチがつき、カスタマイズされた学習プランを通して志望校への合格をサポートする「合格特訓コース」ですが、受験に対するモチベーションがまだそれほど高まっていない高一・高二生では、なかなか初回課金に到達しないという課題がありました。無尽蔵に開発リソースをつぎ込めるわけではない状態でも、何かできることはないだろうかーーチームとして連携しながらアイデアを出し、モニタリングを行い、そのデータに基づいて改善を進めることで、初回課金率を17%も向上させたプロダクトマネージャーの光岡昇平さんと企画担当の池田美沙枝さん、データ面でチームを支えたエンジニアの中西慶彰さんにお話を伺いました(2019年度MVP受賞チームです)。

大所帯でも「全員合格」のスローガンはぶらさず共有

Qまず、「合格特訓コース」の特徴を教えてください。

 

光岡:高校生1人一人の志望校に合わせた学習プランを提供し、志望校の合格までサポートするコースです。申し込みをした高校生が合格特訓コースのトップページに到達すると、いくつかの動画が用意してあります。われわれはそれを「ガイダンス」と呼んでいますが、このガイダンスを見て「合格特訓コースってこういうものなんだな、メッセージ機能というのもあるんだな」と理解した上で、入会受付担当者とチャット機能を使ってメッセージのやりとりをします。そして、そのやりとりの内容を踏まえて大学生のコーチがアサインされ、オンラインでコーチングを提供しながら学習していく流れになっています。

 

Qサービスは、かなり多くのメンバーに支えられているんでしょうね。

 

池田:はい。関係者という意味でいうとかなりの数がいます。社内には、コンテンツ担当や開発を担うエンジニアのほか、ビジネス側のメンバーがいます。それ以外に、大学生コーチとして活躍されている方々が230名おり、外部の委託先パートナーさんにもご協力を得ながらコーチサービスを運営しています。

 

Qこれだけの大所帯の中で、全員が大切にしている哲学や方針はありますか?

 

池田:合格特訓コースは「全員合格」というスローガンを掲げています。まずは使ってくださる生徒さん一人一人が志望校に合格すること。そこをぶらすことなく、そのために何をすべきかという方針を立ててやっています。それに付随する形で、「生徒さんにとって一番いいことって何だっけ」という「ユーザーファースト」というキーワードも、会議の中でよく出てきますね。

入会時のガイダンス整備とマッチングルールの変更で初回課金率を大きく改善

Q合格特訓コースが抱えていた初回課金率の課題とはどういうものだったのですか?

 

中西:合格特訓コースの主要なターゲットは、高三・高卒生で、入会はだいたい3月から始まり、7月までで締め切ってしまいます。これに対し12月から1月にかけての時期にターゲットとなるのが高一・高二生の方々です。ただ、この時期に高一・高二生の初回課金率がなかなか上がらないという課題がありました。高三・高卒生の方々には大学受験という大きなモチベーションがあるため、入会者数も初回課金率も比較的高いのですが、これに比べ高一・高二生の初回課金率が低く、それを向上させたいと皆が考えていました。

 

Qこれに対し、どのような施策を打ったのですか?

 

中西:いろいろありますが、今回特にポイントとなったことは2つあります。1つは、2週間用意している無料体験期間中にいろいろな体験ができるようガイダンスを整理したこと。もう1つは、学生一人一人を担当し、コミュニケーションを取る「コーチ」のアサインを工夫することでした。私はモニタリングを通じて、こうした施策の効果がどうだったかを皆さんにフィードバックする役目を果たしました。

 

光岡:合格特訓コースでは申し込みから初回課金に至るまで、14日間の無料期間があります。そこで大学生コーチとやりとりしてサービスの価値を感じてもらい、14日間を突破してもらうことが重要になってきます。

 

 合格特訓コースは、Webのほか、スマートフォン向けアプリでも利用できるのですが、初回課金に至るポイントとして、アプリをどれだけ利用しているかが効いていそうだな、という話が出発点でした。アプリならば、コーチからチャットのメッセージが届いた時に「メッセージを受信しました」と通知が自動で表示されます。それで生徒さんも「じゃ、ちょっとやりとりしようかな」とモチベートされてスムーズに進むのではないかと考えたからです。そこで、初回課金に至る道筋として、1日目にアプリをダウンロードしてもらい、チャットや学習体験を経験してもらうのが定石じゃないかと考えました。

 

 これが、トップページの動画ガイダンスの工夫の話につなります。当初のガイダンスは、言うなれば一つにまとまりすぎていたんです。合格特訓コースそのものの説明にアプリの説明、その他もろもろの要素が、1つの動画の中にごちゃまぜに凝縮されている状態でした。そこで、「合格特訓の説明」「アプリ利用方法の説明」という具合に内容ごとに動画を分割し、それぞれタイトルをつけて別々に表示するようにしました。加えて、動画の順番を入れ替えできるように修正し、合格特訓コースがどういうものかを見たすぐ後にアプリの利用につながるよう、スムーズに促す導線を整えました。

 

池田:こんなふうに入会導線を整えていったんですが、まだ初回課金率には改善の余地があるね、と議論する中で、コーチのアサインについても工夫することにしました。

 

 合格特訓コースでは、申し込みの際に志望校も登録していただきます。その情報を元に、例えば「早稲田大学文学部」を志望する生徒さんには「私立文系」のコーチがつくという具合に、志望校のカテゴライズにマッチするコーチをアサインしてきました。けれど高一・高二生という受験に対する温度感がまだ上がっていない時期では、志望校自体が明確に固まっていなかったり、学習意欲もそんなに高くないところがあります。そんな中で、志望校に合わせたコーチのマッチングが刺さるとは限らないケースがあることが見えてきました。

 

 また、カスタマーから「どうしても女性のコーチがいい」とか、逆に「どうしても男性のコーチがいい」というお問い合わせをいくつかいただいていたことも踏まえて、「女性の生徒には女性のコーチをつけるという具合に性別でマッチングさせれば、初回課金を乗り越え、継続率が高まるのではないか」と仮説を立てて、中西さんにデータ抽出をお願いしてみたんです。すると、女性生徒と女性コーチでマッチングした場合に、初回課金率が5%程度高くなりそうだということがわかりました。そこで、高一・高二生に限っては性別と文理に合わせてコーチをつける形にオペレーションを変更したところ、2週間で初回課金率が5%上がる結果が得られました。

 

Q5%という数字は大きいですね。

 

池田:そうですね、意外とびっくりする結果でした。やはり高一・高二生の場合、志望校への意識よりも、やりとりの温度感が近いなどコーチを身近に感じやすいといった事柄のほうが重視されるのかもしれません。そこが今回、いい方向に結果が出たの理由の1つかなと思っています。

「ファネル」でデータを共有し、スピード感を持って施策を実施

Q仮説を立てて施策を打つのはいいのですが、時には目論見が外れることもあると思います。そんな時、どう方向を修正していますか?

 

池田:グループ全体で週次でモニタリングし、会議を持っていました。もし数値が伸びてないことが分かれば、運用ベースで変えられることならば翌週や翌々週くらいのスピード感で手を打つ感じでした。開発が関係する内容になるともう少し長いスパンになりますが……。

 

光岡:すぐにデータや数値といったフィードバックを受けられるチーム体制だったので、それを見てすぐ次のアクションを考えるサイクルを短期スパンで回すことができたのがよかったと思います。改善に向けた施策っていろいろあると思います。中にはプロダクトのUIを変えたり、がっつり開発する方法もあると思いますが、実現にはやはり開発リソースが必要になります。協力していただいたエンジニアさんたちが他の案件も抱える状況だったこともあり、開発リソースがない状況でも何かできることがあるはずだ、と考えた中で打ったのが、動画の分割や順序の変更でした。システムに改修を加えなくても実現できる、よりライトな方法を考えて、仮説検証を回してフィードバックを得たのも、サイクルも回す早さにつながったんじゃないかなと思います。

 

Qデータを元に議論して方向性を決め、試す姿勢が徹底していますね。

 

光岡:たぶん、合格特訓チームには根強い「データを見る文化」があると思います。数字を見るためのツールを中西さんに整えてもらって、みんなが見られる環境があったのは大きいと思います。

 

中西:合格特訓コースではモニタリングツールを使って無料体験中や有料課金中の生徒の行動をフィードバックしています。これを用いて、例えば無料体験の2週間のうちに通過してほしいポイントの通過率などをまとめて、ファネルとして可視化しています。ガイダンスの改善やコーチのマッチングを工夫した結果、初回課金率がどれだけ上がったかも、このファネルを通じて見ていました。

 

池田:ファクトベースの文化はスタディサプリ全体にありますが、リクルートとQuipperが一緒になってから、よりいっそう高まった気がしますね。社内にエンジニアさんがいて、みんなで一緒で開発していく体制になってからは、ちゃんとデータを見て、良かったことは良かった、悪かったことは悪かったときちんと判断していく文化が根付いているように思います。そのおかげで今回も、そんなに苦労することなく施策が打てたと思っています。中西さんにデータを出していただいてファクトは分かっていたので、あとは当てるべき運用を変えるだけでしたから。

 

光岡:むしろ気になるのは、ファネルを作り上げるまでにどんな苦労があったかですね。そもそもファネルがなかったら、このプロジェクトは成功しなかったと思っているので……あれはどういう風に整えていったんですか?

 

中西:ファネルはこのためにわざわざ作ったものではなく、「こういうツールがあったら業務改善しやすいんじゃないか」と考えて、以前から徐々にブラッシュアップしてきました。ある程度土台はできているので、見るべき指標さえ定まってしまえばそれほど面倒ではありません。ただ、分析の観点から言うと、「どの指標が効いているか」を見つけるにはある程度トライアンドエラーが必要でしたね。

チーム内の密な関係性と小さい改善の積み重ねが成功のポイント

Q今回の取り組みを成功を導いた要因はどこにあったと思いますか?

 

中西:私はデータチームに所属していますが、今はこちらのチームにきて皆さんと一緒に仕事をしています。席が隣同士だから、ささいなことでもすぐ調べて、より早くPDCAサイクルを回せるように思います。体制的にも、席のような物理的な面でも、コミュニケーションを取りやすい体制を整えておくと、よりいい結果につながるんじゃないかなと思います。

 

光岡:動画ガイダンスの件がそうなんですが、リソース面で制約があってもできることはあると思います。施策を回すと言うと、資金やリソースを投下してがっつりやらないといけない、そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。けれど今回うまくいったのは、がっつりやるというよりも、フィードバックをもらう回数、それに基づいてアクションできる回数が多い手段を取ったからだと思います。できることを見つけて工夫する、それもより短いサイクルで回していくというのが、仮説から答えにたどり着く近道じゃないでしょうか。そして答えが分かれば、あらためてがっつりリソースを投下していくーーそういう戦略の立て方があるんだなと、自分としても学びました。

 

池田:お二人がおっしゃった通りで、小さくクイックに始めて回すことと、チーム内の関係性が密であること、この2点に尽きると思います。大きい施策って、派手で華やかに見えるのでやりたくなることもあると思いますが、改善行動でいうと、初めに小さくやってみて改善を積み重ねる、それを数多くやっていけるほうがゴールに近いのかなと思います。それに、何かやりたいと思っても、一人でできることってそんなに幅広くありません。中西さんや光岡さん、それにエンジニアの方々やパートナーさんなど多くの方と密にコミュニケーションを取れる関係を作っておき、データや大切にすべき信念といった共通認識を持っておくことが重要だなと思っています。

 

 Q チームとして動く中で、それぞれ他の2人に学んだことは何でしたか?

 

池田:中西さんは本当に仕事が早いです。私たちにとってデータを見ることは肝ですが、それをクイックに、的確な形で出してくださるので助かっています。光岡さんは、コミュニケーション能力がめちゃくちゃ高くて、まさにPM向きだなって常々思っています。われわれビジネス側とエンジニアさんとの架け橋を担っていただいていたので、チームを離れてしまうのが残念すぎて……。

 

光岡:そうおっしゃっていただけると嬉しいですね。僕から見て中西さんは、仕事が早いのはもちろんですが、何か依頼した時、こちらのばっくりした依頼をいったん受け止めて、「こういった定義でやるんですよね」とか「期間の絞り方はどうしますか」といった具合に、アウトプットの確度を高めてくれる質問を返してすり合わせをしてくれてありがたかったです。池田さんはビジネス側の立場ですが、論理的に物事を考え、背景も含めて順序立てて話をしてくれるので、開発の要件を詰めるのがすごくやりやすかったですね。

 

中西:実は、数字のことを細かくいうのは苦手という方もビジネス側の中にはいらっしゃるんですが、池田さんは、カンではなくデータを活用してくれます。データを見て決めるという意識が強い方で、とてもやりやすかったですし、コーチ側からの意見をフィードバックしていただけたのもありがたいです。光岡さんは、元々は開発者でありつつビジネス側の感性も持ち合わせているので、話がしやすいし、ビジネスも巻き込んだ話を進めやすかったなと思います。

 

Q今後、それぞれどのような取り組みを進めていく予定ですか?

 

中西:今回達成した初回課金率の向上を一時的なものに終わらせず、永続的にしていくことを目指したいと考えています。そのために自分自身、もっと当事者意識というか、オーナー目線で考えるようにしていきたいですね。また、僕は合格特訓コースだけでなく小・中のコーチングも見ているため、小・中のサービスで得られた知見を高・大にフィードバックしたり、その逆を行ったりという具合に、互いのプロダクトのいいところを互いに吸収していく橋渡し役ができたらと思います。

 

池田:昨期では初回課金率の改善のために小さく性別マッチングを試しました。今期はコーチの組織体制を大きく変えて高三・卒と高一・二に分け、さらにマッチングのロジックも変更するという取り組みを、今まさに始めています。どんな結果が出てくるか、半分期待、半分どきどきという感じですが、この体制変更によってどのくらい改善が見られるかをきちんと分析し、新たな改善ポイントを見つけて、生徒さんにとってよりよい学習環境を提供できるよう改善し続けていきたいと思います。

 

光岡:私はこの4月から異動となり、B2B事業部で、学校向けにスタディサプリを提供する部隊に所属することになりました。こちらのチームには、データを整える、ファクトを整えるという観点でまだ整備の余地がありそうなので、今回の経験を生かして、これまで合格特訓コースでやってきたファネルの整備を推進したり、チーム内でのKPIを策定するといったことをやっていくつもりです。今回の知見をB2Bにも共有していければと思っています。




2020/4/15

※記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

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